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債務整理に対する心構え

ローンが返せなくなった時「どうしよう?」と慌ててしまうでしょう。対応方法を知っていたとしても、直ぐに冷静な対応ができません。

しかし、対応する知識があれば、後に落ちついて考える事ができます。もしもの時に知るのではなく、もしもの時のために事前に対応方法を知っておきましょう。

「知らない」と「知っている」との違い

平成10年から自殺者の数は急増し、平成23年まで14年間3万人を切ることはありませんでした。

平成10年に起きた自殺者急増の原因は、バブル崩壊後の長引く不況による経済苦での自殺者が増えたからといわれています。

その後、平成19年をピークに年々その数が減り始め、平成24年にようやく3万人を切りました。

自殺者数の推移(単位:人)
自殺者総数 内、経済苦が原因
H18 32,155 6,969
H19 33,093 7,318
H20 32,249 7,404
H21 32,845 8,377
H22 31,690 7,438
H23 30,651 6,406
H24 27,858 5,219
H25 27,283 4,636
H26 25,427 4,144

*内閣府「自殺の統計」より筆者作成

債務整理が世間に認知し始められた頃が平成19年頃、この頃にはヤミ金問題や商工ローン問題も取上げられ、その後、多重債務者問題、過払い問題、グレーゾーン金利の撤廃と、債務に関する環境が大きく変わってきました。

それらが自殺者の数を減らした原因とは言い切れませんが、一つの要因になったのは間違いありません。

借金で苦しむ人の多くが「どうしたら良いか分からない」という、解決方法を見つけられない事が苦しみの大きな原因になっています。そしてその結果、自死というとても悲しい決断をしてしまう人も少なくありません。

しかし、上記のデータが示している通り、解決方法を知るだけで大きく人生が変わるのです。

借入状況を整理する

任意整理や自己破産のように法律家に依頼する場合でも、特定調停のように自力で手続きを行う場合でも、債務や家計状況などを表などにまとめて置くと、相談の際や申立の際に自分の状況を伝えやすくなります。

(例)債務者一覧
債権者名 Aカード B信販 Cファイナンス
最初の
借入日
2012/10/2 2013/8/25 2011/5/12
利率 18% 18% 15%
残債務額 50万円 30万円 100万円
毎月の
返済額
2万円 1.5万円 4万円
支払い状況 延滞なし 延滞1ヶ月 延滞1ヶ月

 

(例)家計表
項目 金額
①収入(手取り) 200,000円
食費 30,000円
家賃 60,000円
水道光熱費 10,000円
通信費(電話・ネット) 20,000円
保険料等 10,000円
遊興費(お小遣い等) 20,000円
②支出合計 150,000円
③差引残高(①-②) 50,000円

相談する法律家の専用の書式や、特定調停の申請書式がありますが、このようにまとめておけば書き写すだけですみます。

自分の状況が整理できていないまま相談に行っても、初めて相談を受ける法律家は余計に状況が把握できませんので、しっかりと伝える為にも整理する必要があります。
※カード等の最初の借入年月日が分からない場合は、おおよその年数でも問題ありません。

また、状況を整理すると、自分でも気が付かなかったことを発見できます。カードローンが複数社に及ぶと、「◯◯カードは2万円で」など、1社に対する毎月の返済額は覚えているのですが、毎月総額でいくら返済しているのか把握していない人が多くいます。

そういう人の場合、このように一覧にまとめると、自分が毎月支払っていた額に驚く人もいて、それが債務整理に踏み出す原動力になることもあります。

状況を整理すると、相談相手に状況を伝えやすくするだけではなく、自分自身の確認と反省になりますので、相談や申請をする前に準備しておいて下さい。

借金問題は必ず解決できる

何ヶ月も延滞していても、「任意整理」や「特定調停」「自己破産」はできます。

既にカード会社から訴えられて差押えされていたとしても、それらを止めて解決する方法があります。カードローンに連帯保証人がいたとしても、連帯保証人と一緒に考え、債務整理をすれば解決できます。

ヤミ金から借りていても警察に相談すれば解決できます。その他、住宅ローンや事業用の借入れであったとしても、解決できない借金問題はありません。

借金苦に悩む方の多くは、家族に相談できないと一人で問題を抱えてしまっています。

しかし、一人で考えるには限界があります。多少の知識があっても一人ではできないことも多く、それらが債務整理に踏み出す力を失わせてしまいます。

身近に相談できる家族や友人がいるのであれば、思い切って打ち明けてみることからはじめてみましょう。

家族に相談するだけでなく、専門家への相談も上手に活用してください。

法テラスという国が設立した法的問題の相談・解決する機関で相談料は無料です。その後の債務整理の費用なども立替えてくれます。

(参考)法テラス

法テラスほか、無料で相談を受けつけている法律家もたくさんいます。

また、現在、生活困窮者に対し、各行政で相談窓口を設置していますので、借金問題だけではなく、生活苦なども無料で相談できます。

専門家に相談する際は、一人の専門家のアドバイスだけを鵜呑みにせず、複数の専門家からのアドバスを聞き、より確実な方法を探し出すよう心掛けて下さい。

ここで得た知識や書籍やネットなどの情報だけで解決方法を見出すのではなく、その知識をもとに自分の考えをまとめ、それを踏まえて専門家に相談し、専門家からのアドバイスを参考にして、自分に合ったベストな解決方法を決めて下さい。

債務整理の選択方法

「任意整理」「特定調停」に「自己破産」どれが自分に合った方法なのだろう?と悩む人は多いでしょう。各々の特徴や違いのどの部分が自分に合っているかに着眼すれば、ベストな解決方法の選択の鍵となります。

家計状況で判断する

「任意整理」と「特定調停」は減額された債務(借金)を継続して返済するという方法で、「自己破産」は債務がゼロになり、返済が無くなります。よって、収入は減ってしまったが、生活費を除いても多少の余裕はあるという人は「特定調停」や「任意整理」を検討しても良いでしょう。

それに対し、収入が大幅に減った人、リストラなどで職を失い収入が途絶えてしまった人、返済できないくらい多額の借金を背負ってしまった人など、生活するのが精一杯で余裕が無い場合は、「自己破産」を検討してみて下さい。

このように家計の状況で「できること」「できないこと」を比べることは、債務整理を選択する重要な方法です。

家計状況で判断する
生活費を除いても多少の余裕がある 任意整理or特定調停
生活するのが精一杯でその他の余裕は無い 自己破産

 特徴で比べてみる任意整理or特定調停

「債務整理の種類」でお話した、各々の特徴をおさらいしてみましょう。

主な特徴
任意整理 弁護士や認定司法書士に、返済額の減額や過払い請求の交渉を依頼すること。
民間の対処方法なので確定事項に法的拘束力はない。
特定調停 主に簡易裁判所へと申立をし、調停委員を介して債務の分割返済・過払い請求の交渉をすること。 法的拘束力あり。但し、取引が終了したものに対しての過払い金請求はできない。
自己破産 地方裁判所へと申立する法的手続き。免責許可を得て債務全般の返済義務が免除される。

「自己破産」は借金がゼロになるという点が、「任意整理」や「特定調停」と違う点です。これは「自己破産」の最大のメリットでもあり、ある意味最強な方法です。「もう借金返済に追われる生活は嫌だ」という人は、自己破産を検討するのも良いと思います。

ただし、所有資産を換価(売ってお金に替える)すれば弁済できる人や、返済額を減額すれば返済できる人などは自己破産を申請しても却下される可能性があるので、ただ「借金を返したくない」という理由だけで「自己破産」を選ぶのはおすすめできません。

次に「借金は返済したい」という人は「任意整理」や「特定調停」が向いています。ただし、前記のように「生活するだけで精一杯」という家計の人は、「任意整理」や「特定調停」は向いていませんので、良く考えましょう。

特徴で比べてみる任意整理or特定調停

では次に「任意整理」と「特定調停」を比べてみましょう。この2つには「民間の手続き」と「公の手続き」の違いがあります。この違いによって「できるもの」と「できないもの」がお互いにあります。

過払い金の返還の取り扱いの違い

「任意整理」は弁護士や認定司法書士などの代理権の資格を持った人もしくは法人に、債権者との交渉の代理をお願いする「民間の契約」に基づいた解決方法です。よって、現在債務が残っている返済を減額してもらう交渉だけではなく、既に取引が終了した(既に完済した)債務に対する過払い請求など、取扱いできる事に幅があります。

それに対して「特定調停」は、債権者に対して返済額を減額してもらう交渉を、裁判所に仲裁に入ってもらう「法的手続き」です。

特定調停法により、返済条件の軽減などを債権者に促し、債務者が立ち直れるよう支援する手続と定められたものなので、既に取引が終了した債務に対しての過払い請求はその主旨に反する為、できません。
※取引が継続中の債務に対しての過払い金での相殺・返還請求は特定調停でもできます

よって、既に取引が終わっている債務に関しての過払い金の返還を希望するなら、任意整理が向いていることになります。

法的拘束力の違い

「任意整理」には「債務者から直接取り立ててはいけない」という貸金業法での法的拘束力はありますが、差押えなどの強制執行を停止する法的拘束力はありません。

それに対して「特定調停」は「事前措置」の申請をすれば、強制執行の申立の禁止及び停止ができます。

よって、既に債務名義を取られていたり、強制執行を止めたいのであれば、特定調停が向いていることになります。

また、「特定調停」で決まった和解事項を記載した「和解調書」には判決文と同様に、調停で決まった返済を滞った場合、債権者は差押えができるという法的拘束力があります。

それに対して「任意整理」での和解は、債権者と債務者間で取り決めた民間の約束ですから、任意整理で決まった返済を滞ったとしても、それを理由にして差押えはできません。

法的であれ民間の約束であれ、決まったことは守るということは大切なことですが、再び訪れるかもしれない不測の事態に備えて考えるのも、選択条件の一つといえます。

その他にも、費用の問題や労力の問題などの状況に応じた条件での選択方法があります。

特徴 任意整理 特定調停
過払い金 ・取引状態に関係なくできる ・取引が終了した過払いは請求できない
法的拘束力 ・強制執行は止められない
・約束を守れなくてもそれを理由に差押えはできない
・強制執行を止めることができる
・約束を守れなかった場合、差押えができる
費用 ・債権者一件当たり数万円 ・債権者一件当たり2,000円
労力 ・法律家に殆どお任せ ・平時の日中に裁判所に出頭する
・資料等の作成も自力で行う
秘密厳守 ・依頼者にしか連絡しない ・裁判所からの通知が自宅に届く

比較する方法・条件はいろいろありますので、自分の状況に合わせてベストな選択をして下さい。

 


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返せなくなった時の対処方法(債務整理)

 

債務整理その3・自己破産

「自己破産をすれば借金がゼロになる」ということは、多くの人が知っているかと思います。

しかし、「財産の全てを失う」など間違った認識をしている人も少なくなく、それ故に自己破産に踏み切れない人も多くいます。

しかし、自己破産は最低限の生活を約束された上で、債務を無くす救済の法律なのです。

自己破産とは

借金が全てゼロになる法的手続きです。ただし、一部免除されない借金があり、個人の場合は滞納税金や損害賠償金、養育費などは免除されません。

正確には自己破産だけでは借金をゼロにはできません。自己破産は「借金の返済ができない」という裁判所からの「破産宣告」を受けるもので、その後、免責許可決定を受けなければ借金はゼロにはならないのです。

免責が下りない(免責不許可)理由としては

・財産を隠す
・破産手続き直前の財産の換金行為
・破産手続き直前に、一部の債権者のみ返済する
・ギャンブルや浪費による借金
・詐欺的行為による借金
・虚偽の申請

などがあります。

また、自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2種類あります(管財事件の場合、少額管財事件と管財事件の2種類があります)。

同時廃止とは、財産がなく、免責不許可の理由も見当たらない人の為に、自己破産の開始と同時に破産宣告を行う手続きです。精査する内容が少ないので、時間も短く、その分裁判所へ支払う費用も少なくすみます。

管財事件とは、財産がある場合や、免責不許可の理由に該当する可能性がある人に、裁判所が管財人を付けて財産管理・処分、又は免責不許可事由を調査する手続きです。財産を処分して債権者へ配当したり、免責に関する調査をしたりするなどに時間が掛かります。

また、管財人の費用を申立人が負担しなければならないため、費用も掛かります(所有している財産が比較的少ない場合は少額管財になります)。また、自己破産の申請手続きの依頼をする法律家の費用も掛かります。

自己破産手続き費用の例(東京都の場合)
裁判所へ支払う額 法律家への依頼費用
同時廃止 3万円程度 20万円~
少額管財事件 20万円~ 35万円~
管財事件 50万円~ 60万円~

自己破産のメリットとデメリット

メリット

一番のメリットは借金がゼロになるということです。費用対効果の面で考えれば一番優れた債務整理の方法といえるでしょう。

また、残せる財産もあります。「すぐにはできない差押え」にある「自由財産」がこれにあたります。

(自由財産・動産※主なもの※)
・現金99万円まで
(紙幣や硬貨などの現物のお金)

・生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具

・1ヶ月間の生活に必要な食料、燃料

・農業、漁業や技術者、職人、労務者などを営む者の欠くことができない器具やその他の物(稙や家畜、繁殖用の魚や卵、飼料なども含む)(ただし商品を除く)

・実印その他の印で職業又は生活に欠くことができない物

・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

・学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

・国民年金法、厚生年金法などの社会保険としての公的年金

・健康保険法、雇用保険法、介護保険法などの医療保険及びその他の社会保険

・生活保護法、児童福祉法、母子保健法、老人保健法などの公的扶助及び援助に関する給付など

・労働基準法、自動車損害賠償保険法などの災害補償・損害賠償等の請求権など

また、自由財産以外にも裁判所が認めれば、残せるものもあります。(自由財産の拡張)

・残高が20万円以下の預貯金
・20万円以下の生命保険解約返戻金
・処分見込額が20万円以下の自動車
・居住用家屋の敷金債権
・電話加入権
・見込額の8分の1が20万円以下である退職金債権
・見込額の8分の1が20万円を超える退職金債権の8分の7
・生活に欠くことができない家財道具以外の家財道具(TVやエアコンなど)

デメリット

残せる財産もありますが、処分してお金に替えて(換価)債務者へ配当しなればならないものもあります。

また、住宅ローンなどの担保に入れた不動産など抵当権が付いている不動産に関しては、不動産を売却して抵当権者の返済へ充てなければなりません。

不動産以外で処分しなければならない資産としては、主に「贅沢品」と呼ばれるもので、生活に欠かせない衣類であってもブランド品のものや絵画などは、換価して配当しなければいけません。

また、自己破産は救済の法律なので、破産法には法的拘束力はありませんが、その他の法律で破産申請から免責まで、職業や資格を制限されるものがあります。

主なものは

弁護士・司法書士・税理士、公認会計士・ 弁理士・宅地建物取引業者・証券会社外交員・生命保険募集員、損害保険代理店質屋・古物商、風俗営業者・警備員・後見人

などで、免責事由の決定後までその資格を使えない、職業に就くことができになどの制限があります。(ただし、免責決定後は、制限が解除されます)

また、その他の債務整理同様、個人情報機関に最大10年、事故情報(ブラック)として登録されます。

メリット ・借金がゼロになる
・残せる資産がある
デメリット ・不動産など処分しなければならないものがある
・職業や資格に制限がある
・個人情報機関に最大10年間、登録される

自己破産の注意点

資産や収入が少ない、もしくはそれらが無いという人にとっては、有効な債務整理の方法でしょう。

自己破産すると

・選挙権が無くなる
・戸籍に載る
・海外旅行に行けなくなる

などの噂話しのようなものがありますが、このような制限はありません。自己破産は救済の法律なので、破産法自体になんら制限はないのです。

先に記述した「免責が下りない(免責不許可)理由」の「ギャンブルや浪費による借金」であっても、しっかりと反省しているのであれば、免責許可される場合もありますので、弁護士や認定司法書士などの専門家に正直に話して相談して下さい。

また、その後の生活の為にと、自己破産の手続き前に資産を隠したり、先に親戚や知人から借りたお金を返したりすると、資産隠しや偏頗弁済(へんぱべんさい)とみなされ、財産を処分された上に、借金は残る最悪の状態になってしまいます。(破産宣告後、免責不許可)

また、そのような行為が悪質と判断されれば刑事告訴されることもありますので、自己破産と決めたら包み隠さず状況を伝え、依頼した法律家や裁判所の指示に従い、粛々と行ないましょう。

※個々の状況によって詳細は異なりますので、法テラスやお近くの弁護士会・司法書士会などにご相談下さい※

債務整理その2・特定調停

特定調停とは、裁判所に仲裁に入ってもらい、債権者と債務返済に関して話し合いをする制度です。

裁判所を使う手続きのため、難しいのでは? とハードルが高い印象を持つ人もいますが、法律家などの専門家を使わずとも同等の効果が期待できるので、費用対効果の高い債務整理の方法です。

特定調停とは

民事調停の中でも債務問題に特化した調停で、個人債務だけではなく、法人の債務整理にも利用できます。

大型案件としては大阪ドームの債務整理などに活用された例もあります。

個人の債務整理の方法としては、その後にできた「任意整理」により、特定調停の利用者は減少傾向にありますが、費用が安いなど任意整理よりも優れた面もあります。

個人債務の場合、主に毎月の返済額を減額してもらう・過払い金の返還をしてもらうなど、任意整理と同様の効果があります。また、個人債務の場合は、簡易裁判所に申立をするのが一般的です。

特定調停のメリットとデメリット

メリット

申立すると裁判所より債権者に対して申立受理通知書などが送付されます。通知書を受け取った債権者はその時点から、債務者へと直接取り立てができなくなります。

また、任意整理同様、利息や遅延損害金もその時点でストップするので、交渉成立までの期間に債務が増えることはありませんし、将来利息もかかりません。

任意整理と似ているのですが、特定調停は法的手続きなので、競売や差押えなどの強制執行、また、手形などの取り立てを止めることができます、但し、特定調停の申立と同時に「事前措置」という手続きが必要となります。

また、任意整理よりも費用がとても安く押えられます。個人の債務の場合、申立先(債権者)一社に対し、手数料500円と手続き費用(主に郵送料)1,500円の合計2,000円で済みます。
※複数の申立の場合、手数料は件数分、予納郵便切手代は1件増える毎に256円プラスとなります。

また、法的手続きであるとはいえ、調停なので和解が目的であるゆえに、資格制限などの制限規定もありません。

デメリット

債務返済の減額を目的とした手続きなので、申立人に支払い資力が無い場合は、債権者との交渉が成り立ちませんので、申立ができません。

また、申立は本人が行うのが原則ですので、申立書の作成や補足資料等の作成などをしなければいけません。同様に、平日の日中に決められた日時に、裁判所へ自分でと出向く必要があります。

裁判所から家族などに直接問い合などはありませんが、裁判所からの郵送物が本人に届きますので、同居する家族に知られる場合があります。

法的手続きなので、和解調書には法的拘束力があります。債務者が和解で决定した額を返済できなかった場合、債権者は債務者の資産を差押えすることができます。

返済途中の債務に対して過払い金が発生する場合は、特定調停でも過払い金の返還もしくは、過払い金を残債務から差し引いて債務額の減額などをすることはできますが、取引が終わった後(完済後)の過払い金請求や、過払い金請求のみの申立はできません。

当然、債権者が加盟する信用情報機関に、事故情報(ブラック)として完済後5年間登録されるので、その間は新たな借入れができなくなります。

裁判所が関わる手続きとはいえ、債権者が必ず従わなければならないということではありませんので、和解が成立しない場合もあります。調停が不調になれば、再び債権者からの取り立てが始まります。

その際、債権者からは残元金及び未払利息及び遅延損害金を加算した額を一括請求されます。

メリット ・申立すれは債権者からの取り立てから開放される
・将来利息をゼロにできる可能性がある
・競売、差押えなどの強制執行が止められる
・資格制限などの法的拘束力はない
デメリット ・返済能力が無いと申立できない
・裁判所から自宅へ通知が届くので家族に知られる可能性がある
・和解で決まった返済が滞った場合、債権者は差押えができる
・過払い金の請求のみの申立はできない
・個人情報に事故情報(ブラック)として登録(完済後5年間)されるので、その間、新たな借入れができない。
・和解が成立しない場合もある

特定調停の注意点

法律の専門家に依頼する「任意整理」と違い、特定調停は原則、自力で申立をします。調停に入れば調停委員が仲を取り持ってくれますが、ある程度の債務整理の知識が必要です。

また、特定調停は「約束通りの返済ができなくなったから、毎月の返済を減らして」と債権者にお願いをする制度ですから、自分で返済計画案を提示しなければなりません。

任意整理のように法律家がやってくれることを自力で行う必要があるので、単純に「返済額を下げたい」というだけでは、申立すら却下されることがあります。

また、裁判所で行う制度ですから、当然、調停日は平日の日中に行われます。仕事を休むことができる人などであれば良いですが、そう簡単に休めない人にとっては向いていない制度かもしれません。

費用が安いというメリットは、その分、自身の負担が大きくなるというデメリットでもあります。

現在、特定調停の申立数が減り、任意整理する人が増えているのは、費用はかかるが任意整理の方が手間暇がかからないというのが原因の一つと考えられています。

とはいえ、差押えなどの強制執行を止めることができたり、個人の債務だけでなく、事業主の債務も取り扱いできるという点においては、任意整理より優れています。

債務整理その1・任意整理

債務整理の一つである「任意整理」は、弁護士や認定司法書士という法律家が関わるので、法的手続きと勘違いされがちです。

しかし、あくまでも債務返済に関して債権者との交渉を法律家に依頼するという、民間同士の契約に基づく業務依頼なのです。とはいえ、債権者に対しては法的拘束力がある有効な手段です。

任意整理とは

任意整理とは、弁護士もしくは認定司法書士(以下、「法律家」という)が債務者に代わって債権者に対して返済額の減額や過払い金の返還などの交渉をすることです。

法律家と依頼者(債務者)個人との間で締結する請負契約ですから、法的手続きではありません。

多くは個人名義のカードローンなどの債務を対象に、毎月の返済額の減額や過払い金の返還請求の交渉を法律家が債務者に代わって行ないます。

残債務の返済期間は通常3年~5年になりますが、債務額が高額な場合などは、返済能力等に合わせて長期返済にすることも可能です。

また、過払い金が発生する場合、債権者に対して、取引履歴の開示請求などを経て、過払い金の返還請求の交渉もしてもらえます。

任意整理のメリットとデメリット

メリット

依頼すると同時に、法律家から債権者へと受任通知が送付され、債権者はそれを受け取った時点から、直接債務者への取り立てをしてはならないため、返済を止めることができます。

また、利息や遅延損害金もその時点でストップするので、交渉成立までの期間に債務が増えることはありません。

また、債務が残る場合、交渉次第では完済までの将来的にかかる利息をゼロにすることも可能です。

法的手続きではないので、債務者に対しての法的拘束力はありませんので、自己破産のように職業規制や資格制限もありません。

しかし、貸金業法では、債権者は弁護士や認定司法書士から受任通知を受け取った後の債務者本人からの直接回収などを禁じています。よって、貸金業者がこれらに違反すると刑事罰や行政処分に課せられます。

また、依頼者(債務者)個人と法律家との間の契約ですから、依頼者の承認がなければ、たとえ家族であっても情報等が漏れる心配もありませんし、債権者との交渉は全て法律家が行なってくれますので、労力、精神的負担なども大幅に軽減できます。

デメリット

残債務が残る場合において、依頼者に支払い資力が無い場合は債権者との交渉が成り立ちませんので、任意整理はできません。

また、法律家に仕事を依頼するので、当然、法律家の費用がかかります。法的手続きでなく、あくまで債権者との交渉事なので、交渉が決裂する場合もあります。

もし、債権者との交渉が決裂し、依頼した法律家が自ら代理業務から降りたり(辞任)、依頼者が法律家との契約を解除した場合(解任)、再び債権者からの取り立てが始まります。

その際、債権者からは残元金及び未払利息及び遅延損害金を加算した額を一括請求されます。

また、任意整理は債権者にとって取引上、事故扱いとなるので、債権者が加盟する信用情報機関に、事故情報(ブラック)として完済後5年間登録されるので、その間は新たな借入ができなくなります。

なお、債権者からの取り立て等を止めることができますが、競売や差押えなどの強制執行を止めることはできません。

メリット ・法律家に依頼中は債権者からの取り立てから開放される
・将来利息がゼロに出来る可能性がある
・家族にでも秘密にできる
・法律家が交渉してくれるので、手間暇がかからない
・訴訟をしなくても過払い金を請求できる
・資格制限など、債務者には法的拘束力はない
デメリット ・返済能力が無いと利用できない
・依頼する法律家への報酬がかかる
・交渉事なので、交渉が決裂する場合もある
・個人情報に事故情報(ブラック)として登録(完済後5年間)されるので、その間、新たな借入ができない
・競売、差押えなどを止めることはできない

任意整理の注意点

多少の慣習のような決まり事もありますが、法的手続きではないので、「必ず◯◯でなければならない」という堅苦しいものではありません。返済する資力と「返したい」という思いが債権者に伝われば、通常3年~5年という返済期間も10年にしてもらったというケースもあります。

但し、交渉するのは法律家なので、「全部おまかせ」のような姿勢では、自分が思い描いていた結果にならないこともありますので、依頼する法律家にしっかりと自分の意志を伝え、交渉経過もきちんと報告してもらえるようお願いするのも重要です。

また、交渉事なので法律家のレベルによって差が出ます。債権者に通りやすい条件しか提示しない法律家もいますので、しっかりとした法律家選びも重要です。

HPなどで「任意整理」を得意としているという条件だけで決めるのは危険です。法律家の交渉等のレベルは、HPだけでは判断出来ません。また、仕事を依頼するということは、法律家とのコミュニケーションが必要です。

優秀な能力を持っていたとしても、自分との性格的な相性が合わないと、良いコミュニケーションが取れなくなってしまい、自分の思いを十分に伝えることができません。

仕事とはいえ、その人との相性はとても重要なことなのです。

より良い法律家を見つけるには、知人などに紹介してもらうのも良いですが、できるだけ多くの法律家に直接会って話しを聞き、自分に合った法律家を探すのが確実です。

「相談を受けてもらったから、依頼しなければならない」ということはありません。相談は相談、依頼は依頼と、わりきって考え、「この人なら信頼できる」という法律家を見つけて下さい。

債務整理の種類

「借金が返せなくなったら自己破産しかない」と思っている人も多くいると思います。

しかし、債務整理にはいろいろな方法があります。「解決方法はたくさんある」という希望を持って前に進んでもらうために、ここでは債務整理の種類と特徴を説明します。

解決方法の種類

住宅ローンやカードローン、事業用借入など、借金の種類はさまざまで、その種類によって解決方法は異なります。

「カードローンだからこれしか方法はない」ということではなく、カードローンだけでも、複数の解決方法があるのです。

まずはカードローンの債務整理方法の種類とその特徴を解説します。

カードローンの債務整理の種類には「任意整理」「特定調停」「自己破産」と3つの方法があります。

ネットなどでは「自力で交渉した」という人の体験記のようなものも多く存在しますが、誰もができる方法ではありませんし、この3つの優れた解決方法がある以上、効率・効果面などから考えても「自力交渉」はお勧めできません。

この「任意整理」「特定調停」「自己破産」には、それぞれの特徴があります。それぞれに長所・短所がありますが、それぞれの短所を補う形で生まれたり、その時代の社会情勢などを取り入れたりと進化してきました。

バブル崩壊後の長引く不況の影響で生活苦・借金苦を原因とした自殺者が急増しました。その原因の一つとして「借金が返済できなければ自己破産しかない」という限られた対処方法が弊害と考えられ、新たな債務整理の方法として、平成12年に特定調停が施行されました。

その後、グレーゾーン金利問題から過払い金請求の増加に伴い、任意整理という新たな債務整理のシステムが確立しました。

歴史の浅い解決方法もありますが、時代のニーズに合わせ、現行の解決方法の短所を補う形で生まれたものなので、新しくても洗練されたシステムなのです。

ここで各々の進化の歴史を全て語ることは出来ませんが、一例を挙げるならば、2011年に起きた東日本大震災の被災者が自己破産を選択した場合に限り、自由財産(差押え出来ない財産・自己破産の時でも取り上げられない財産)の現金の上限額を99万円から500万円まで引き上げました。

これは現法の制度(現金99万円まで)では被災者の復興・再生の妨げになると判断されたからです。

解決方法の各々の特徴

以前は個人の債務整理の手段としては、自己破産しかありませんでした。

しかし、社会情勢などの変化により自己破産だけでは対応できないことが多くなり、その部分を補う為に特定調停が生まれ、また特定調停の短所を補う為に、任意整理が確立されました。

しかし、自己破産より特定調停の方が優れ、特定調停より任意整理の方が優れているというわけではなく、債務者自身の状況や希望に対応すべく、各々の存在があるということです。

主な特徴
任意整理 弁護士や認定司法書士に、返済額の減額や過払い請求の交渉を依頼すること。
民間の対処方法なので確定事項に法的拘束力はない。
特定調停 主に簡易裁判所へと申立をし、調停委員を介して債務の分割返済・過払い請求の交渉をすること。 法的拘束力あり。
自己破産 地方裁判所へと申立する法的手続き。免責許可を得て債務全般の返済義務が免除される。

自己破産は借金をゼロにしてもらうための法的手続きで、債務に対して返済する資力が無い、もしくは資力が足りない場合に使う解決方法です。

ただし、債務をゼロにする代わりに、一部の所有資産を処分し債務へ充当しなければならないという条件があります。

それに対して任意整理や特定調停は、返済資力はあるが、当初の約束通りの毎月の返済額では返済できなくなってしまったので、毎月の返済額を減額してもらうという解決方法です。自己破産のように所有資産を処分し債務に充当する必要はありませんが、債務は残り、返済しなければなりません。

また、任意整理は法律家に頼むのでその分の手数料が必要になりますが、特定調停は調停委員の力を借りながら自分で交渉するので手数料はあまりかかりません。

このようにカードローンの債務整理には状況や要望に応じた対処方法があります。

どの方法が自分に合っているのかを知るには、解決方法の仕組みを理解した上で選択する必要があります。

返済が出来なくなったからといって「もうだめだ」と悲観することはありません。解決方法は必ずありますから、まずは自分に合った債務整理の方法をじっくりと考えましょう。

過払い金とは

未だにCMなどで見聞きする「過払い金」ですが、平成19年に貸金業法の改正、平成22年には出資法も改正され、それ以降の借り入れに関しては過払い金は無くなりました。

しかし、過払い金によりすでに債務が無いことを知らずに、未だに返済し続けている人も多くいるとのことです。

また、過払い金の意味を良く理解できていない人が、債務整理の際に、過払い金に期待している人も多いようです。自分にあった債務整理の方法を探し出すためにも、過払い金の正しい知識を知ることが重要です。

過払い金の仕組み

過払い金が発生する原因は、法改正前の利息を制限する法律の上限利率の差により生じた金利の差です。これを「グレーゾーン金利」と言います。

法改正前は
・出資法  29.2%
・利息制限法 15%
(貸付金が100万円を越える場合)

という2つの法律があり、各々の上限金利に差がありました。貸金業であれば、利息制限法に従わなければならないのですが、一定条件を満たしていれば出資法の上限金利まで利息を取ってもいいという「みなし弁済」(※)という取り決めがありました。

これに目をつけた一部の貸金業者が「みなし弁済」を理由に金利が高い出資法の利率を適用していたのです。

<グレーゾーン金利>


※みなし弁済
以下の要件を全て満たしている場合において、出資法の上限金利を超えない範囲で取得した利息は有効な利息の弁済であったとみなす。

  • 登録を受けた貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約であること。
  • 借主が利息として任意に支払ったこと。
  • 貸金業者が、借主に対し、消費貸借契約締結の際、遅滞なく、貸金業法17条所定の、契約の内容を明らかにする書面(17条書面)を交付したこと。
  • 貸金業者が、借主に対し、借主から返済を受けた都度、直ちに、貸金業法18条所定の受取証書(18条書面)を交付したこと。

しかし、殆どの業者はみなし弁済の要件を満たしておらず、出資法の上限金利まで取るのは違法だと判断され、法改正前の出資法と利息制限法の上限金利の差(グレーゾーン金利)の部分の利息分が「払い過ぎた利息」=過払い金と認められたのです。

 

過払い金の計算方法

過払い金を計算することを「利息制限法に引き直しをする」と言います。

この計算は、支払った利息から正しい利息(利息制限法の金利)を差し引いた残りが「過払い金」という単純な計算ではありません。

取引(返済した日若しくは借りた日)を時系列にし、取引ごとに支払い済みの利息から利息制限法の上限金利分を差し引き、残りを元金に充当し、訂正された元金から利息制限法の上限金利で正しい利息を算出し、次に支払った利息(出資法金利)から正しい利息分を差し引いて・・・という計算を繰り返し行い、最終取引時に払い過ぎていた場合その額を返還してもらいます。

また、利息制限法で引き直し計算しても、残元金が残る場合もありますが、その場合は引き直し後の残債務を返済しなければなりません。

利息制限法の引き直し計算

平成15年頃から過払い金の返還を認める判決が出始め、平成18年の最高裁判決を基に、過払い金の返還請求が多く行われるようになりました。

また、平成19年のみなし弁済の条項を廃案とする貸金業法の改正をきっかけとし、提訴することなく、法律家を介して債権者に過払い金の返還を要求するだけで、過払い金が返還されるようになりました。

但し、過払い金の請求には時効があり、最終取引日から遡ること10年間までしか請求することができません。

また、法改正以前から借入があったとしても、銀行系カードローンなどは当初から、利息制限法に定められた利率なので、過払い金は発生しませんし、平成24年以降はグレーゾーンが無くなりましたので、その後に新規借入したものも過払い金は発生しません。

このように過払い金が発生するには、一定の条件が必要で、カード等でキャッシングしているからといって、必ず過払い金があるとは限りません。

また、過払い金の計算は複雑な計算が必要なので、自力で計算することはお勧めできません。

「払ったお金が返ってくるかも」と過度な期待をして、独学で債務整理の方法や返済計画を考えても、間違った方法を選択してしまう可能性がありますので、債務整理業務を扱う法律家に相談をし、過払いの有無などを見定めた上で、正しい解決方法を選択して下さい。

すぐにはできない差押え

借金が返済できなくなると「差押えされてしまう」と恐れる人が多くいます。しかし差押えもブラック同様、しっかりと仕組みを理解している人は少ないのです。

差押えは債権回収の方法の一つですが、実は債権者が利用する頻度はそれほど多くはありません。その理由を知れば差押えに対する不安も拭い去ることができるでしょう。

差押えは簡単にはできない

債権回収の差押えは、裁判所に申請して裁判所が行ないます。貸したお金を返してもらえないからといって、債権者(貸し手)が勝手に債務者(借り手)から資産を取り上げることはできません。

もし、債権者が自力で債務者から資産を取り上げたとしたら、それは窃盗となり犯罪になってしまうのです。

差押えは裁判所を動かすものですから、それなりの権利が必要です。この権利を「債務名義」と言います。

債務名義には

・債権者が裁判で勝訴して「差押えしてもいいよ」と書かれた判決文
(確定判決・仮執行宣言付判決)

・裁判や調停で和解した条件が守れなかった場合
(和解調書・調停調書の約定不履行)

・公正証書で契約した条件が、守れなかった場合
(執行認諾付公正証書の約定不履行)

などがあります。

このように、カードなどの返済が滞り、カード会社が債務者の財産を差押えするには、まずは提訴する必要があるのです。裁判をするには提訴側がその費用を一時的に負担しなければなりません(裁判費用は債権者が勝訴すれば債務者に請求することができます)。

また、裁判には一定の時間がかかりますし、法廷に出頭する人件費もかかります。その後の差押えにも、同様にお金や時間がかかります。

そのため、債権者は差押えするか否かを十分に検討する必要があり、それにも時間が必要になります。

そして、その後、債務者に最後通告として、返済期日を明記した内容証明を送付し、返済期日を待ち、返済が無いことを確認した上で、提訴手続きをし、裁判を経て差押え手続きをしなければならないのです。

 

差押えまでの流れ

1:差押え実施の検討
債務者の資力や資産の調査・検討
2:内容証明書送付
期日までの一括返済の督促及び、返済不履行の場合は法的手続き移行の意志表示
3:貸金請求訴訟
遅延損害金を含めた一括返済を請求。仮執行宣言の要求付き
4:勝訴及び判決文の交付
一括返済の請求と、執行できる決定が下され、その後、判決文が交付される
5:強制執行手続きの申請
申請書及び添付書面と執行費用の納付
6:強制執行実施
差押命令書の送付や執行官による差押え執行など

 

提訴から判決文の交付までの期間は、裁判所によって異なりますが、早くても2ヶ月程度かかります。

その後直ぐに強制執行の手続きを申請したとしても、差押えが実行されるまで2ヶ月程度かかるので、提訴から差押えまでは最短で約4ヶ月程度かかることになります。

これに一括返済までの延滞期間の2~3ヶ月、その後の取り立て期間が3~5ヶ月、差押えの検討時間に1ヶ月程度かかるので、延滞から提訴までの期間は最短で6ヶ月になります。それに提訴~差押えまで4ヶ月を足すと、延滞してから差押えまでは最短でも10ヶ月はかかるのです。

差押えの種類と方法

差押えは法律上では「強制執行」と言い、種類は「不動産執行手続き」「債権執行手続き」になります。ここではカード系債務に関する「債権執行手続き」について解説します。

債権執行手続きの主な差押え対象は「動産」「預金(有価証券含む)」「給与」です。動産とは、主に家にある資産です。動産の差押えは、執行官が直接出向いて差押えします。

但し、家財など全てを差押えできるという訳ではありません。差押えできない財産を「自由財産」と呼び、次のようなものがあります。

<自由財産・動産の主なもの>

  • 現金99万円まで(紙幣や硬貨などの現物のお金)
  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具、家電等(※テレビ1台まで、エアコン1台まで)
  • 1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料
  • 農業・漁業や技術者、職人、労務者などを営む者の欠くことができない器具やその他の物(稙や家畜、繁殖用の魚や卵、飼料なども含む、但し商品を除く)
  • 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができない物
  • 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
  • 学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
    など

また、自由財産以外の動産であっても、価値が無いものは差押えの対象にはなりません。

次に預金口座の差押えです。預金口座を差押えする場合、債権者は差押えする銀行名・支店を指定し、裁判所は銀行(支店)に対して差押命令書を送ります。銀行は指定された日の営業時間内(9時~15時)に、該当する口座に入ってきたお金を凍結します。

但し、差押命令で支持された金額以上のお金は差押えされません。

また、預金口座の差押えは指定された日のみですので、翌日に入って来たお金は、たとえ前日(差押当日)に入ってきたお金が差押金額に足りなくても、差押えできません。

そして差押手続きが終了すれば、預金口座は今まで通り使えるようになります。

また、自由財産として差押えできない「現金99万円」とは、家など手元にある紙幣や硬貨などを示しており、それが99万円までなら差押えできないということなのです。

よって、預金口座に入っているお金は現物ではないので全額が差押え対象となります。但し、預金口座に入っているお金が生活するために必要なものと、裁判所が認めれば相当額を引き出すことができます。

最後に給与の差押えです。債務者に給与を支払っている会社に対して、裁判所から給与の差押命令が届きます。

手取り額44万円以下の場合は4分の1、44万円を超える場合には33万円を除いた金額が差押の対象となります。また、給与の場合、請求額に達するまで差押えが続きます。

その他の差押え財産として、退職金・保険金・賃貸などの敷金・保証金などがありますが、これらは支払い者が債務者に支払う時に差押えされるので、差押命令が届いたからといって直ぐに取られるということにはなりません。

また、動産以外の差押えできない主な自由財産として、各種年金や給付金、また災害指定区域にお住まいの方の場合には支援金や義援金も対象となります。

差押えは法的なことなので、逆らうことはませんが、知識を持つことで対処方法は見えてきます。

ブラックなんて怖くない

借金の返済ができなくなると「ブラックになる」または「ブラックリストに載ってしまう」などと、ブラックを恐れる人が多くいます。

しかし「ブラックってなに?」と聞くと、殆どの人が正確に答えられず、ただイメージだけで恐れているのです。しかし本当のことを知れば大したことではないということが分かります。そこで、皆さんが恐れる「ブラック」の正体をお話します。

ブラックリストは存在しない

「ブラック」とは金融機関の業種別の協会で作られた信用情報機関に「事故情報」として記載されることの俗称です。最初は業界用語(隠語)だったのですが、いつの間にか世間に知れ渡り、「ブラック」という言葉の雰囲気から「悪いもの」「怖いもの」というイメージが強く付いてしまったようです。

ブラック(事故情報)は、延滞や債務整理・法的手続きなど、金融機関に対して迷惑な行為をした場合に記録されるものです。これにより新規借入申請などの審査のために、加盟している信用情報機関のデータを閲覧した際、「この人は延滞してますよ」などと注意を促すことができます。

また、個人情報機関には事故情報だけでなく、借入状況なども登録されていて、近年、改正された貸金業法の年収の1/3以上の借入れは原則禁止という「総量規制」などのチェックにも利用されています。

これらの情報は個人毎に登録・管理されているもので、事故情報が登録された人だけを集めたデータ(リスト)は存在しません。

要するに「ブラックリスト」は存在しないということです。

では何故「ブラックリスト」という言葉があるのかは、はっきりとした理由は分かりませんが、アメリカで重犯罪者を集めたリストを「ブラックリスト」と呼ぶなど「悪い人を集めたデータ」というところからイメージされたものなのではないかと推測されます。

因みに事故情報もなく、借入れも無い人のことを「ホワイト」と言います。

信用情報機関の種類とブラック情報の掲載期間

信用情報機関には次のようなものがあり、金融機関の業種別の協会が、独自にデータ管理しています。

<銀行系>
一般社団法人 全国銀行協会 個人情報センター

<クレサラ系>
株式会社シー・アイ・シー(CIC)

<貸金業全般>
株式会社日本信用情報機構(JICC)

全銀協は銀行に属する金融機関しか加盟できませんが、CICとJICCは、ほぼ全ての金融機関が加盟でき、各信用情報機関の情報交流システム(CRIN)を利用することにより、延滞などの事故情報は全ての金融機関が調べることができます。

また、本人であれば自分の情報を見ることができます。各信用情報機関によって情報開示の仕方が違いますので、HP等で確認して下さい。

登録される情報は、現在の借入れに関する情報として、次のような項目が登録されています。
①個人情報
氏名・生年月日・住所・電話番号・勤務先・勤務先電話番号

②借入契約に関する情報
契約日・契約の種類・商品名・支払回数・契約額・契約終了予定日・登録会社名等

③支払い状況に関する情報
報告日・残債額・請求額・入金額・入金履歴・延滞・保証履行・破産の有無・これらの発生日・延滞解消日・終了状況等

また、新規借入申込の際や、ローン返済途中の支払能力の審査などのために、加盟業者(金融機関)が情報を照会した場合も、その日時などが記録されます。

信用情報機関によって情報の登録期間は異なりますが、延滞等の事故情報の登録期間は次の通りです。

登録内容 全銀協 CIC JICC
延滞 取引終了から5年 取引終了から5年 取引終了から5年
自己破産(官報情報) 開始決定日から10年 開始決定日から5年 開始決定日から5年
その他の債務整理など 発生日から5年 発生日から5年 発生日から5年

自己破産の情報は、一番長い全銀協で10年ですから、借入れの中に銀行のカードローンがあると、事故情報が10年間登録されるということになります。

ブラック情報が及ぼす影響

信用情報機関に登録してある情報は、主に金融機関が審査のために利用します。よって、事故情報が登録されている場合、審査基準としてはマイナスになります。但し、事故情報の内容によってはマイナスポイントも異なるのです。

まずは「延滞」という事故情報が登録されている場合、完済してから5年間は信用情報機関に登録されます。ということは完済しないとずっと登録され続けることになりますので、この状態では新たな借入れはできません。

しかし、延滞後、完済した場合は「延滞」という情報と「完済」という情報が登録されます。この状況でその他の事故情報が無く、収入などのその他の審査ポイントが良ければ、新たに借入れできる可能性があります。

次に自己破産の場合、一番長くて全銀協で10年間登録されています。

では自己破産してから10年間はカードなどの借入れができないかというと、そうではありません。事故情報は審査基準のひとつに過ぎません。

自己破産したということは、その時点では借金が無いということですので、数社から借りている人よりもリスクは無いという評価にもなります。実際に自己破産してから数年で住宅ローンを組めた人は大勢いるのです。

最後に自己破産以外の債務整理の場合、各信用情報機関とも、登録機関は5年間です。

また、債務整理の場合、その返済期間は大体3年~5年になります。債務整理で返済中は金融機関も新たな借入れを認めることはしませんが、債務整理が終了すればその時点での借入れはゼロです。

収入等その他の審査ポイントが良ければ、債務整理と登録されている状態でも新たな借入れは可能です。

ちなみに、近年、アパートなどの賃貸物件を借りる際において、保証会社の審査に通ることが条件という場合がありますが、保証会社がクレジット会社などの金融機関系でない限り、金融機関(銀行や消費者金融など)の信用情報機関を利用することはできませんので、たとえば消費者金融の利用履歴があり、その履歴に関するブラック情報で審査が通らないということはありません。

このように、その後の対処の仕方やその他の条件によって、ブラック情報のマイナスポイントを補うことができるのです。だから、ブラックなんて怖くは無いのです。

無理して返さなくても大丈夫

「この程度の返済なら大丈夫」と思って借りたカードローン。しかし、病気やケガなどによる休業・失業、突然のリストラなど、思いもよらなかった出来事で収入が減ってしまい、借りたお金が返せなくなってしまう。このような状況に陥る人も少なくありません。

しかし、返せなくなった時の為に対処出来る方法が複数あり、自分に合った解決方法を選ぶことが出来ます。

返せなくなったからといって、慌てて無理な返済をせず、まずは債務整理の正しい知識を知り、自分に合った解決方法を見つけましょう。

返せなくなった時に何が起きるのか?

カードローンなどの借金が返せなくなると多くの人は、「自己破産されられて身ぐるみ剥がされる」「怖い人が取り立てに来る」「ブラックとレッテルを貼られ、何をするにも障害になる」などの悪いイメージばかり思いつくのではないでしょうか。

しかし「お金を借りる」という行為は「貸して下さい」「貸してあげます」という約束事なので、貸手側には「返してもらえなかった場合」というリスクに備えた対処方法が準備されています。

貸手側が想定していることなのですから「借りたお金は絶対に返さなきゃ」と深刻に考え過ぎて、生活もままならない状況まで自分を追い詰めることではありません。

まず、カードの返済が遅れたらどうなるかを時系列で表すと、次のようになります。

延滞期間 債権者(貸手)らのアクション
口座引き落としで返済の場合 ATM等で返済の場合
1日目~半月程度 再引き落としの通知(書面) 返済を促す電話や書面
半月~1ヶ月まで 再々引き落としの通知(書面) 返済を促す電話・書面プラス訪問
※ここまでは、延滞分を返済すれば、再びカード利用が出来るようになる。
1ヶ月~2ヶ月まで 口座引き落とし手続きの停止及び振込にての返済を促す電話・書面・訪問がある 返済を促す電話・書面・訪問がある
※これを過ぎると、延滞分を返済してもカードの利用出来なくなる
延滞2ヶ月~ ・残債務に遅延損害金を含めて一括請求される
・返済期日までに返済が無い場合は、法的手続き(提訴)に入る業者もある

金融機関によって多少の違いはあるものの、意外に時間はあるものです。ですから、「何がなんでも、期日までに返さなきゃ」と、焦って生活費までつぎ込む必要はないのです。

怖い取り立てが無い理由

「それでも返せなければ、キツイ取り立てに遭う」と不安になると思いますが、取り立ての方法は法律によって厳しく制限されています。「貸したお金を返してもらう為には何をやっても良い」というワケではありません。

借りたお金に関わる法律は「民法」や「貸金業法」ですが、それよりもまず従わなければならないのが憲法第25条です。

憲法第二十五条 第一項
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

日本の法律では憲法を守ることが最優先とされています。健康で文化的な最低限度の生活する権利があるということは、誰であろうとその行為を脅かすことはしてはならないのです。

借りたお金が返せなくなったとしても、生活費まで取られることはありませんし、差し出す必要もないのです。

この考えを大前提とし、金融機関を監督する金融監督庁から、各金融機関に対し、取り立てに関する規制が通達されています。

金融監督庁 事務ガイドライン 貸金業関係 3-2-2取立行為規制

(1) 貸金業者又は債権の取立てについて委託を受けた者等が、債務者、保証人等を威迫する次のような言動を行ってはならないこと。

  1. 暴力的な態度をとること。
  2. 大声をあげたり、乱暴な言葉を使ったりすること。
  3. 多人数で押し掛けること。

(2) 債務者、保証人等の私生活又は業務の平穏を害する次のような言動を行ってはならないこと。

  1. 正当な理由なく、午後9時から午前8時まで、その他不適当な時間帯に、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。
  2. 反復継続して、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。
  3. はり紙、落書き、その他いかなる手段であるかを問わず、債務者の借入れに関する事実、その他プライバシーに関する事項等をあからさまにすること。
  4. 勤務先を訪問して、債務者、保証人等を困惑させたり、不利益を被らせたりすること。

(3) その他、債務者、保証人等に対し、次のような行為をしてはならないこと。

  1. 他の貸金業者からの借入れ又はクレジットカードの使用等により弁済することを要求すること。
  2. 債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨の通知、又は、調停、破産その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること。
  3. 法律上支払義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立てへの協力を要求すること。
  4. その他正当と認められない方法によって請求をしたり取立てをすること。

このように、(1)取り立てに対する姿勢・(2)プライバシー保護・(3)違法行為等を具体的に禁止し、この規制に反した場合は、重い行政処分が課せられます。

また、債権者は1ヶ月程度の返済の遅れを「遅延」、2ヶ月を超える返済の遅れを「延滞」というように分けています。

「遅延」の場合は、電話や書面にて「どうしました?早く返して下さいね」と、催促するだけの状況と位置づけていて、この段階で遅れた分を返済すれば、引き続きカードを利用することが出来ます。

それでも返済が滞る場合は「延滞」という位置づけになり、一括請求や訴訟などの法的手続きによる回収の対象となります。

これも金融監督庁からの「遅れたからといって、直ぐに一括請求などしないように」という指導があるからですが、直ぐに不良債権として対処すると、それだけ取り扱う数が多くなり、業務に支障をきたすという、金融機関側の都合もあるのです。

このように、法的にも実務的にも「1日でも遅れたら」ということは無く、「どうしようか?」と考える時間は十分にあります。どうしても返済が苦しい状況に陥ったら、焦らず、冷静になって考えることから始めましょう。