すぐにはできない差押え

借金が返済できなくなると「差押えされてしまう」と恐れる人が多くいます。しかし差押えもブラック同様、しっかりと仕組みを理解している人は少ないのです。

差押えは債権回収の方法の一つですが、実は債権者が利用する頻度はそれほど多くはありません。その理由を知れば差押えに対する不安も拭い去ることができるでしょう。

差押えは簡単にはできない

債権回収の差押えは、裁判所に申請して裁判所が行ないます。貸したお金を返してもらえないからといって、債権者(貸し手)が勝手に債務者(借り手)から資産を取り上げることはできません。

もし、債権者が自力で債務者から資産を取り上げたとしたら、それは窃盗となり犯罪になってしまうのです。

差押えは裁判所を動かすものですから、それなりの権利が必要です。この権利を「債務名義」と言います。

債務名義には

・債権者が裁判で勝訴して「差押えしてもいいよ」と書かれた判決文
(確定判決・仮執行宣言付判決)

・裁判や調停で和解した条件が守れなかった場合
(和解調書・調停調書の約定不履行)

・公正証書で契約した条件が、守れなかった場合
(執行認諾付公正証書の約定不履行)

などがあります。

このように、カードなどの返済が滞り、カード会社が債務者の財産を差押えするには、まずは提訴する必要があるのです。裁判をするには提訴側がその費用を一時的に負担しなければなりません(裁判費用は債権者が勝訴すれば債務者に請求することができます)。

また、裁判には一定の時間がかかりますし、法廷に出頭する人件費もかかります。その後の差押えにも、同様にお金や時間がかかります。

そのため、債権者は差押えするか否かを十分に検討する必要があり、それにも時間が必要になります。

そして、その後、債務者に最後通告として、返済期日を明記した内容証明を送付し、返済期日を待ち、返済が無いことを確認した上で、提訴手続きをし、裁判を経て差押え手続きをしなければならないのです。

 

差押えまでの流れ

1:差押え実施の検討
債務者の資力や資産の調査・検討
2:内容証明書送付
期日までの一括返済の督促及び、返済不履行の場合は法的手続き移行の意志表示
3:貸金請求訴訟
遅延損害金を含めた一括返済を請求。仮執行宣言の要求付き
4:勝訴及び判決文の交付
一括返済の請求と、執行できる決定が下され、その後、判決文が交付される
5:強制執行手続きの申請
申請書及び添付書面と執行費用の納付
6:強制執行実施
差押命令書の送付や執行官による差押え執行など

 

提訴から判決文の交付までの期間は、裁判所によって異なりますが、早くても2ヶ月程度かかります。

その後直ぐに強制執行の手続きを申請したとしても、差押えが実行されるまで2ヶ月程度かかるので、提訴から差押えまでは最短で約4ヶ月程度かかることになります。

これに一括返済までの延滞期間の2~3ヶ月、その後の取り立て期間が3~5ヶ月、差押えの検討時間に1ヶ月程度かかるので、延滞から提訴までの期間は最短で6ヶ月になります。それに提訴~差押えまで4ヶ月を足すと、延滞してから差押えまでは最短でも10ヶ月はかかるのです。

差押えの種類と方法

差押えは法律上では「強制執行」と言い、種類は「不動産執行手続き」「債権執行手続き」になります。ここではカード系債務に関する「債権執行手続き」について解説します。

債権執行手続きの主な差押え対象は「動産」「預金(有価証券含む)」「給与」です。動産とは、主に家にある資産です。動産の差押えは、執行官が直接出向いて差押えします。

但し、家財など全てを差押えできるという訳ではありません。差押えできない財産を「自由財産」と呼び、次のようなものがあります。

<自由財産・動産の主なもの>

  • 現金99万円まで(紙幣や硬貨などの現物のお金)
  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具、家電等(※テレビ1台まで、エアコン1台まで)
  • 1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料
  • 農業・漁業や技術者、職人、労務者などを営む者の欠くことができない器具やその他の物(稙や家畜、繁殖用の魚や卵、飼料なども含む、但し商品を除く)
  • 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができない物
  • 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
  • 学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
    など

また、自由財産以外の動産であっても、価値が無いものは差押えの対象にはなりません。

次に預金口座の差押えです。預金口座を差押えする場合、債権者は差押えする銀行名・支店を指定し、裁判所は銀行(支店)に対して差押命令書を送ります。銀行は指定された日の営業時間内(9時~15時)に、該当する口座に入ってきたお金を凍結します。

但し、差押命令で支持された金額以上のお金は差押えされません。

また、預金口座の差押えは指定された日のみですので、翌日に入って来たお金は、たとえ前日(差押当日)に入ってきたお金が差押金額に足りなくても、差押えできません。

そして差押手続きが終了すれば、預金口座は今まで通り使えるようになります。

また、自由財産として差押えできない「現金99万円」とは、家など手元にある紙幣や硬貨などを示しており、それが99万円までなら差押えできないということなのです。

よって、預金口座に入っているお金は現物ではないので全額が差押え対象となります。但し、預金口座に入っているお金が生活するために必要なものと、裁判所が認めれば相当額を引き出すことができます。

最後に給与の差押えです。債務者に給与を支払っている会社に対して、裁判所から給与の差押命令が届きます。

手取り額44万円以下の場合は4分の1、44万円を超える場合には33万円を除いた金額が差押の対象となります。また、給与の場合、請求額に達するまで差押えが続きます。

その他の差押え財産として、退職金・保険金・賃貸などの敷金・保証金などがありますが、これらは支払い者が債務者に支払う時に差押えされるので、差押命令が届いたからといって直ぐに取られるということにはなりません。

また、動産以外の差押えできない主な自由財産として、各種年金や給付金、また災害指定区域にお住まいの方の場合には支援金や義援金も対象となります。

差押えは法的なことなので、逆らうことはませんが、知識を持つことで対処方法は見えてきます。