債務整理その1・任意整理

債務整理の一つである「任意整理」は、弁護士や認定司法書士という法律家が関わるので、法的手続きと勘違いされがちです。

しかし、あくまでも債務返済に関して債権者との交渉を法律家に依頼するという、民間同士の契約に基づく業務依頼なのです。とはいえ、債権者に対しては法的拘束力がある有効な手段です。

任意整理とは

任意整理とは、弁護士もしくは認定司法書士(以下、「法律家」という)が債務者に代わって債権者に対して返済額の減額や過払い金の返還などの交渉をすることです。

法律家と依頼者(債務者)個人との間で締結する請負契約ですから、法的手続きではありません。

多くは個人名義のカードローンなどの債務を対象に、毎月の返済額の減額や過払い金の返還請求の交渉を法律家が債務者に代わって行ないます。

残債務の返済期間は通常3年~5年になりますが、債務額が高額な場合などは、返済能力等に合わせて長期返済にすることも可能です。

また、過払い金が発生する場合、債権者に対して、取引履歴の開示請求などを経て、過払い金の返還請求の交渉もしてもらえます。

任意整理のメリットとデメリット

メリット

依頼すると同時に、法律家から債権者へと受任通知が送付され、債権者はそれを受け取った時点から、直接債務者への取り立てをしてはならないため、返済を止めることができます。

また、利息や遅延損害金もその時点でストップするので、交渉成立までの期間に債務が増えることはありません。

また、債務が残る場合、交渉次第では完済までの将来的にかかる利息をゼロにすることも可能です。

法的手続きではないので、債務者に対しての法的拘束力はありませんので、自己破産のように職業規制や資格制限もありません。

しかし、貸金業法では、債権者は弁護士や認定司法書士から受任通知を受け取った後の債務者本人からの直接回収などを禁じています。よって、貸金業者がこれらに違反すると刑事罰や行政処分に課せられます。

また、依頼者(債務者)個人と法律家との間の契約ですから、依頼者の承認がなければ、たとえ家族であっても情報等が漏れる心配もありませんし、債権者との交渉は全て法律家が行なってくれますので、労力、精神的負担なども大幅に軽減できます。

デメリット

残債務が残る場合において、依頼者に支払い資力が無い場合は債権者との交渉が成り立ちませんので、任意整理はできません。

また、法律家に仕事を依頼するので、当然、法律家の費用がかかります。法的手続きでなく、あくまで債権者との交渉事なので、交渉が決裂する場合もあります。

もし、債権者との交渉が決裂し、依頼した法律家が自ら代理業務から降りたり(辞任)、依頼者が法律家との契約を解除した場合(解任)、再び債権者からの取り立てが始まります。

その際、債権者からは残元金及び未払利息及び遅延損害金を加算した額を一括請求されます。

また、任意整理は債権者にとって取引上、事故扱いとなるので、債権者が加盟する信用情報機関に、事故情報(ブラック)として完済後5年間登録されるので、その間は新たな借入ができなくなります。

なお、債権者からの取り立て等を止めることができますが、競売や差押えなどの強制執行を止めることはできません。

メリット ・法律家に依頼中は債権者からの取り立てから開放される
・将来利息がゼロに出来る可能性がある
・家族にでも秘密にできる
・法律家が交渉してくれるので、手間暇がかからない
・訴訟をしなくても過払い金を請求できる
・資格制限など、債務者には法的拘束力はない
デメリット ・返済能力が無いと利用できない
・依頼する法律家への報酬がかかる
・交渉事なので、交渉が決裂する場合もある
・個人情報に事故情報(ブラック)として登録(完済後5年間)されるので、その間、新たな借入ができない
・競売、差押えなどを止めることはできない

任意整理の注意点

多少の慣習のような決まり事もありますが、法的手続きではないので、「必ず◯◯でなければならない」という堅苦しいものではありません。返済する資力と「返したい」という思いが債権者に伝われば、通常3年~5年という返済期間も10年にしてもらったというケースもあります。

但し、交渉するのは法律家なので、「全部おまかせ」のような姿勢では、自分が思い描いていた結果にならないこともありますので、依頼する法律家にしっかりと自分の意志を伝え、交渉経過もきちんと報告してもらえるようお願いするのも重要です。

また、交渉事なので法律家のレベルによって差が出ます。債権者に通りやすい条件しか提示しない法律家もいますので、しっかりとした法律家選びも重要です。

HPなどで「任意整理」を得意としているという条件だけで決めるのは危険です。法律家の交渉等のレベルは、HPだけでは判断出来ません。また、仕事を依頼するということは、法律家とのコミュニケーションが必要です。

優秀な能力を持っていたとしても、自分との性格的な相性が合わないと、良いコミュニケーションが取れなくなってしまい、自分の思いを十分に伝えることができません。

仕事とはいえ、その人との相性はとても重要なことなのです。

より良い法律家を見つけるには、知人などに紹介してもらうのも良いですが、できるだけ多くの法律家に直接会って話しを聞き、自分に合った法律家を探すのが確実です。

「相談を受けてもらったから、依頼しなければならない」ということはありません。相談は相談、依頼は依頼と、わりきって考え、「この人なら信頼できる」という法律家を見つけて下さい。