債務整理その3・自己破産

「自己破産をすれば借金がゼロになる」ということは、多くの人が知っているかと思います。

しかし、「財産の全てを失う」など間違った認識をしている人も少なくなく、それ故に自己破産に踏み切れない人も多くいます。

しかし、自己破産は最低限の生活を約束された上で、債務を無くす救済の法律なのです。

自己破産とは

借金が全てゼロになる法的手続きです。ただし、一部免除されない借金があり、個人の場合は滞納税金や損害賠償金、養育費などは免除されません。

正確には自己破産だけでは借金をゼロにはできません。自己破産は「借金の返済ができない」という裁判所からの「破産宣告」を受けるもので、その後、免責許可決定を受けなければ借金はゼロにはならないのです。

免責が下りない(免責不許可)理由としては

・財産を隠す
・破産手続き直前の財産の換金行為
・破産手続き直前に、一部の債権者のみ返済する
・ギャンブルや浪費による借金
・詐欺的行為による借金
・虚偽の申請

などがあります。

また、自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2種類あります(管財事件の場合、少額管財事件と管財事件の2種類があります)。

同時廃止とは、財産がなく、免責不許可の理由も見当たらない人の為に、自己破産の開始と同時に破産宣告を行う手続きです。精査する内容が少ないので、時間も短く、その分裁判所へ支払う費用も少なくすみます。

管財事件とは、財産がある場合や、免責不許可の理由に該当する可能性がある人に、裁判所が管財人を付けて財産管理・処分、又は免責不許可事由を調査する手続きです。財産を処分して債権者へ配当したり、免責に関する調査をしたりするなどに時間が掛かります。

また、管財人の費用を申立人が負担しなければならないため、費用も掛かります(所有している財産が比較的少ない場合は少額管財になります)。また、自己破産の申請手続きの依頼をする法律家の費用も掛かります。

自己破産手続き費用の例(東京都の場合)
裁判所へ支払う額 法律家への依頼費用
同時廃止 3万円程度 20万円~
少額管財事件 20万円~ 35万円~
管財事件 50万円~ 60万円~

自己破産のメリットとデメリット

メリット

一番のメリットは借金がゼロになるということです。費用対効果の面で考えれば一番優れた債務整理の方法といえるでしょう。

また、残せる財産もあります。「すぐにはできない差押え」にある「自由財産」がこれにあたります。

(自由財産・動産※主なもの※)
・現金99万円まで
(紙幣や硬貨などの現物のお金)

・生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具

・1ヶ月間の生活に必要な食料、燃料

・農業、漁業や技術者、職人、労務者などを営む者の欠くことができない器具やその他の物(稙や家畜、繁殖用の魚や卵、飼料なども含む)(ただし商品を除く)

・実印その他の印で職業又は生活に欠くことができない物

・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

・学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

・国民年金法、厚生年金法などの社会保険としての公的年金

・健康保険法、雇用保険法、介護保険法などの医療保険及びその他の社会保険

・生活保護法、児童福祉法、母子保健法、老人保健法などの公的扶助及び援助に関する給付など

・労働基準法、自動車損害賠償保険法などの災害補償・損害賠償等の請求権など

また、自由財産以外にも裁判所が認めれば、残せるものもあります。(自由財産の拡張)

・残高が20万円以下の預貯金
・20万円以下の生命保険解約返戻金
・処分見込額が20万円以下の自動車
・居住用家屋の敷金債権
・電話加入権
・見込額の8分の1が20万円以下である退職金債権
・見込額の8分の1が20万円を超える退職金債権の8分の7
・生活に欠くことができない家財道具以外の家財道具(TVやエアコンなど)

デメリット

残せる財産もありますが、処分してお金に替えて(換価)債務者へ配当しなればならないものもあります。

また、住宅ローンなどの担保に入れた不動産など抵当権が付いている不動産に関しては、不動産を売却して抵当権者の返済へ充てなければなりません。

不動産以外で処分しなければならない資産としては、主に「贅沢品」と呼ばれるもので、生活に欠かせない衣類であってもブランド品のものや絵画などは、換価して配当しなければいけません。

また、自己破産は救済の法律なので、破産法には法的拘束力はありませんが、その他の法律で破産申請から免責まで、職業や資格を制限されるものがあります。

主なものは

弁護士・司法書士・税理士、公認会計士・ 弁理士・宅地建物取引業者・証券会社外交員・生命保険募集員、損害保険代理店質屋・古物商、風俗営業者・警備員・後見人

などで、免責事由の決定後までその資格を使えない、職業に就くことができになどの制限があります。(ただし、免責決定後は、制限が解除されます)

また、その他の債務整理同様、個人情報機関に最大10年、事故情報(ブラック)として登録されます。

メリット ・借金がゼロになる
・残せる資産がある
デメリット ・不動産など処分しなければならないものがある
・職業や資格に制限がある
・個人情報機関に最大10年間、登録される

自己破産の注意点

資産や収入が少ない、もしくはそれらが無いという人にとっては、有効な債務整理の方法でしょう。

自己破産すると

・選挙権が無くなる
・戸籍に載る
・海外旅行に行けなくなる

などの噂話しのようなものがありますが、このような制限はありません。自己破産は救済の法律なので、破産法自体になんら制限はないのです。

先に記述した「免責が下りない(免責不許可)理由」の「ギャンブルや浪費による借金」であっても、しっかりと反省しているのであれば、免責許可される場合もありますので、弁護士や認定司法書士などの専門家に正直に話して相談して下さい。

また、その後の生活の為にと、自己破産の手続き前に資産を隠したり、先に親戚や知人から借りたお金を返したりすると、資産隠しや偏頗弁済(へんぱべんさい)とみなされ、財産を処分された上に、借金は残る最悪の状態になってしまいます。(破産宣告後、免責不許可)

また、そのような行為が悪質と判断されれば刑事告訴されることもありますので、自己破産と決めたら包み隠さず状況を伝え、依頼した法律家や裁判所の指示に従い、粛々と行ないましょう。

※個々の状況によって詳細は異なりますので、法テラスやお近くの弁護士会・司法書士会などにご相談下さい※